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データ伝送 ~ パケット・ルーティングとは ~
インターネットという基盤では、WWW以外にも様々なサービスが利用できることを学習してきました。ウェブページを閲覧するだけでなく、電子メールを送ったり、ファイルをダウンロードしたりすることができます。
それは、インターネットという巨大なネットワークを利用することによって、自分のパソコンが世界中のコンピュータ等と物理的に「繋がる」ことを意味します。繋がっているからこそ様々なサービスが利用できるのです。
もう少し詳しく言うと、インターネットを利用して何かを行うということは、データ伝送を行っているということになります。
例えば、WWWシステムでハイパーテキスト(ウェブページ)を閲覧するためのプロトコル「HTTP」では、WWWサーバからウェブページのデータを自分のパソコンに伝送してもらう必要がありますし、電子メールであれば、当然データが伝送されて相手に届きます。
また、ファイル転送専用のプロトコルである「FTP」、ネットニュース、Telnetなどのインターネットの多くの要素は、もともとデータ伝送をするためにネットワーク化したことが始まりになっています。
このようにインターネットのサービスを利用するということは、必ずデータ伝送をともなっているのです。
ここで補足をしますが、前項で解説したFTPは「転送」でした。「伝送」と意味の違いはほとんどありませんが、工学的な観点では区別される用語です。
後述するように、ファイルは小さな単位に分割されて伝送されます。このように形を変えて送ることを「伝送」と言い、形を変えずに送ることを「転送」と言います。本項で学習する内容からここでは「伝送」としていますが、同じ意味で使用して問題ありません。
ファイルとデータにも意味の違いはありませんが、WordやExcelなどの形式で保存されたデータをファイル、2進数のバイナリからファイルを含めた広い意味でデータとしています。(ファイルについては、ファイルとは を参照してください)
さて、それではデータはどのようにネットワーク上を伝送されて行くのでしょうか?
インターネット上でデータを送受信する方法は、大別して2通りあります。
まず一つは、
回線交換方式
と呼ばれる伝送方式です。
回線交換方式は電話と同じようなもので、通信相手を特定して1対1の通信を行います。
このため、通信経路が確定してから通信が行われるので、送るデータに送信先に関する情報を持たせる必要がなく、データの送受信はシンプルなものになります。
しかしこの方式では、回線を占有してしまうため、同時にたくさんのユーザーが接続するインターネットなどのネットワークには適していません。
もう一つは、
パケット交換方式(パケット通信)
と呼ばれるデータ伝送方式です。
「パケット」という用語は、スマートフォンや携帯電話料金の「パケット通信料」、「パケ放題」などのフレーズで耳にしたことがあると思います。パケットとは「小包」の意味で、小さなデータ単位のことです。
つまりパケット交換方式とは、
データを小さなパケットに分割して伝送する
という方法になります。
データを分割することによって、回線交換方式のデメリットである「回線の占有」を解決することができます。
なぜなら、
各パケットを同じ経路で伝送する必要はない
からです。
それぞれのパケットをそれぞれ自由な通信経路で届けることができるので、回線を占有しないということです。
そもそも、ファイルとは で学習のとおり、データの最少単位は0と1の2進数であり、私たち人間が扱うためにファイルという形にまとまっている必要がありました。
しかし、ファイルというサイズではデータ伝送には大きすぎるので、パケットという単位に分割して伝送するということです。
小さく分割されたパケットは、大雑把に言えばバラバラの経路で送信先に届けられ、送信先で合体して元のファイルに戻ります。工学的にいう「伝送」がこの意味になります。
なぜこのようなことが可能なのかというと、パケットには、
送信先や送信元の情報なども付加されている
からです。この情報のことを、
ヘッダ情報
と言います。
パケットには必ずこのヘッダ情報が記述されており、ヘッダ情報に従ってパケットはそれぞれ道順が異なっても同じ目的地に到着することができます。
ヘッダ情報はパケットの先頭部分に記述されています。その先頭部分が「ヘッダ」です。
ヘッダ情報が付加されているおかげで、途中経路の一部に障害があって伝送できない場合でも、他のルートを通って届けたり、パケットの到着順序が違っていても、正しい順序で組み立てられるといった柔軟な伝送が可能になります。
こうして、回線を占有してしまうことを防ぎ、同時にたくさんのユーザーがネットワーク上でデータ伝送することが可能になりました。
インターネットなどのネットワークでは、多数の人が同時に使えてこそ利用価値が高まるのであって、特にインターネットで回線を占有することは、大変な障害となります。
パケットに分割して送信することで、多数のユーザーが同時にデータを送受信できることや、また同一の経路を使わなくても、様々なルートを通ってデータを伝送することも可能になりました。
経路が選択可能であるということは、
ネットワークの規模が大きくなるほど効果を発揮する
ので、インターネットには不可欠な仕組みとなっています。
下図は、パケットの使用量を表示したウィンドウです。(Windows10では「Windowsの設定」→「ネットワークとインターネット」から過去30日間の使用状況を確認することができます)
また、ヘッダ情報には、送信先のアドレスの他にも複数の情報が書かれています。
送信元のアドレスや個々のパケットを識別するための識別番号(分割されたパケットを組み立てる)、生存時間(パケットが届かない場合に永遠にネットワーク上に残るのを防ぐ)などの情報があります。
こうしてインターネット上に伝送されたパケットは、ヘッダ情報によってそれぞれ適切なルートを選択して目的地に向かいます。
しかし、そのルート選択は、実はパケット自身が選択しているわけではありません。ヘッダ情報を見て適切な経路を選択するのはパケットではなく他の機器になります。
この機器のことを、
ルータ
と言います。
ルータという名称も耳にしたことがあると思います。Wi-Fiルータがお馴染みです。重要な役割なので大きな機械のように思えますが、家庭用のルータも同じ役割を担っています。
個人が送るメールは家庭用のルータによって最適な経路を選択されて送り出されているのです。このように、ヘッダ情報をもとに通信経路を選択してデータを送りだすことをルーティングといいます。
ルーティングを行うルータは、ネットワークとネットワークの中継地点に存在します。
つまり、
ネットワークとネットワークをルータ同士が接続している
のです。
ルータを家庭や会社等で使用している方は、一度確認してみてください。そのネットワークの一番外側、つまりインターネットや他のネットワークに接続する直前(回線終端装置の次など)に、ルータが接続されているばずです。
ルーティングによって、中継地点ごとにヘッダ情報から適切な経路を選択して送り出せば、データはほぼ最短距離で宛先に届けられます。
もしルータによってルーティングを行わなかったら、例えば、近所の友人にメールを送るのに、パケットが地球の裏側を経由するような事態にもなりかねません。これではネットワークの効率が低下してしまいます。
家庭用のルータも含めた無数のルータが、それぞれパケットの最適な経路を選択して中継し合うのです。こうして様々なルータを介しながら目的地までデータが届くという仕組みになっています。
また、データの通る経路を選択する機能と並んで、必要のないデータ、あるいは不正なデータを通さないというのもルータの重要な役割になります。
不正なデータというのは、ユーザーが設定して決めることができます。例えば、外国からのパケットは通過させないとか、ブラウザで閲覧するウェブページ以外のパケットは通過させないといったルールです。
ルータは、設定されたルールにしたがって、通過してきたパケットのヘッダ情報を見ながら、パケットを通過させたり遮断したりしているのです。
このようにルータがパケットの通過・遮断を選択的に行うことを、
パケットフィルタリング
と言います。
会社などの内部ネットワークとインターネットの中継地点では、通常こうしたパケットフィルタリングを行って、外部からの不正なアクセスを防いでいます。
ただこの機能は、ファイアウォール(詳細は後述します)の機能の一部でもあり、最も一般的なセキュリティ技術なので、破る手段も多く、他の技術と併用するのが一般的です。
更新履歴
- 2008年7月27日
- ページを公開。
- 2009年4月30日
- ページをXHTML1.0とCSS2.1で、Web標準化。レイアウト変更。
- 2018年1月26日
- ページをSSL化によりHTTPSに対応。
- 2022年6月18日
- 内容修正。
参考文献・ウェブサイト
当ページの作成にあたり、以下の文献およびウェブサイトを参考にさせていただきました。
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